■美のシステム化
建築(住宅)デザインにおいて、「美」はシステム化できる。
“美しい”を定義して、システムで評価し、美しいデザインを提案する。
いかにも人間特有の所作に思えるが、「美」の標準的な要素のロジック化は可能だ。
もっと言うと、デザイナー〇〇、△△のフィルタといった特徴もセットできる。
私自身、マルチメディア系の研究会以外に複数の研究会に所属していた。その中に、1/fのゆらぎをもとにした「感性工学研究会」がある。この研究会では脳波とデザイン(美)を研究した。瞑想などで使う音や環境映像もそうだが、一般の風景写真やネクタイ柄など、デザインを周波数として、そのゆらぎから、デザイン性、心地よさ、快適性を評価した。
それから、「形の文化会」。こちらは文字通り文様や街角に溢れるデザイン(シグナル)をウォッチして、観察を楽しんだ。イタリアのアチコチでドアノッカーを撮りまくったのは、この研究会員時代の名残だ。ちなみにノッカー素材としては真鍮が多い事、ドアのノック回数は国際標準があって4回ということも学んだ(笑:余談)。
住宅外観のデザインの良し悪しをシステムで評価するパラメタは、シンメトリック性、視線の長さや動き、相似性、黄金分割、水平ライン、垂直ライン、三次元空間を広く見せるテクニックなどがある。これらを的確に盛り込んだ知的CADが登場しなくてはならない。もうその時期だ。建具の自動配置で満足せずに、敷地のワンクリック入力、まとめたコストダウンの仕上表の松竹梅など、使えそうな数理モデルも数多くある。私の若いころはアフィン変換のような特徴抽出処理やアトラクタの形による特質などを秩序として、アプローチしていた。
色も同様に美しい組み合わせがある。色彩工学、自然言語との関係性など、こちらも研究が深まっている。形、色とヒトの五感において、眼から入る視覚情報が脳に与える影響の割合が大きいことは承知の事実である。
デザイン(ライン、面、形、色、組み合わせ)もそうだが、住宅の間取や設計の自動化を深く考える仕事をしていると、一つひとつの人間の営みが美とつながっていることが良く分かってくる。
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美しく歳を重ねる。
美しく生きる。
美しいデザインが分かる。
美しい言葉づかい。
美しい振る舞い。
美しい……。素敵に……。
私にとって、月々の決算書も【美しさ】を追求するテーマの一つである。
負債の中にも美がある(笑)、こう言いたい。