■基地の町(飛行機)
保育園・幼稚園に無縁の子供だったため、私には沢山の時間があった。
母から与えられたチラシ裏紙と1本の鉛筆、これが仲良しのともだち。
母親の洋裁作業の横で、良く「飛行機」を書いた。
しかし、たいがい謎の物体(オブジェ)になってしまう。
シュリュケンのような、あるいはヒトデのような形。
自分の中では飛行機だけど、誰にも分からん飛行機、謎の飛行物体。
こいつ本当に空を飛ぶのだろうか?
ソ連の恐怖時代で大きな米軍基地があった町だったから、地上から遥か空の彼方を飛ぶ軍用機・飛行機を見たことがあった。そのぐらいの知恵で描くと謎の物体が出現する。
あとは、裏の小川でメダカをとる、指がフヤケルほど川の中をさがす。
メダカのほうが圧倒的に利口だ。
*学校にいって……
舗装もされていない馬糞道の両脇にホッケ(🐡)が落ちている。トラックが運ぶ途中に山と積まれた魚を零すから、魚が道に落ちている、猫も食べないような状態だ。泥まみれのホッケにハエがたかる。私は針金を探して海にはしる。カニと蛸がねらいだ。
まず貝をとって、その中身を針金の先につけて、奴らの巣穴の前にブラブラさせておくと、蛸やカニがどこからともなく現れる。しかし、だいたい私の方が油断しているから、動きだけ観察して餌が無くなってしまう。だが、遊びには十分すぎるスリルだ。そうそう、やつらは烏賊が好きなことを発見した頃だ。
近所の男の子と一緒に海岸に走るときは、大抵、この遊び。
そんな近所の子は中学を卒業すると、大工になったり、集団就職で紡績会社に就職したりした。その流れもあって、今でも、夢のなかで一人海岸に走る。
海は圧倒的な「夢」を与えてくれた。水平線の彼方に自分の知らない世界がある。
ロシアの魚船、海上保安庁の大きな船、軍艦。ロシア人。米軍の軍人。轟くハーレーダビッドソン……。
大きな身体のアメリカ人やロシア人は子供心に恐怖だったが、リトルリーグでドジャースとかジャイアンツなど、大人のリーグと同名で、バスケや野球の日米対抗戦があった。身体の違いがモノをいい、必ず負けるのだが、とても年齢が同じには見えない広い世界を知った。これが私の冒険心に火をつけた(のかもしれない)、試合に負けて、感覚的(身体的)に広い世界を知ったころのこと。