私は蕎麦好きである。息子も蕎麦が大好きなので、手打ちのセットを購入して、修行に励んだこともある。朱塗りの大きなボールの湾曲を利用し、陶芸で鍛えた菊練りを繰り返す。
そこまでは良いとしよう。
問題はそこからだ。丁寧にのばす、パカパカ、ペラペラと裏表にすることは出来ない。その手腕は無理だ。それでも薄くのばす。二八でつなぎの小麦粉を入れても見事な細い蕎麦ができない。包丁を入れて滑らかで細いのが見た目も素敵で美味い。が、無骨な田舎蕎麦になってしまう。それでも、息子は美味い美味いと言って、3人分ぐらいタイラゲル。
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吉祥寺にも美味しい蕎麦屋がいくつかある。
代表的なのは、穂坂、上杉、吉村、中清だ。これが四天王。だが、吉村が数年前に閉じた。いまは三つ、御三家。家の近所の【中清】には週に2度ぐらいのペースで行く。更科もいいが、十割の「きこうち」が風味よし、喉越しよし、歯ごたえよし。幸せだ。
江戸時代、蕎麦屋=居酒屋だっただけあって、定番の板わさ、烏賊焼、鴨焼、茄子揚げと、おつまみも揃っていて、日本酒も銘柄(而今、田酒、飛露喜……)が豊富だ。蕎麦屋で過ごすひと時が至福のときだ。